助成金コンサルは信頼できる?成功報酬型の注意点と専門家の選び方【中小企業向け完全ガイド】

はじめに|「助成金は専門家に任せる」が常識になっていませんか?

「助成金のことは難しそうだから、専門家に任せよう」
「“成功報酬型”なら、受給できたときだけ費用がかかるから安心かも」

そう考えて、助成金申請を外部のコンサルタントや社労士に依頼している企業も多いかもしれません。しかし、その“気軽な外注”が、実は大きなトラブルのもとになっているケースが増えています。

助成金は、確かに制度が複雑で、要件を理解して計画的に進める必要がある支援制度です。一方で、「成功報酬型の助成金コンサル」と呼ばれる業者の中には、制度の本質を理解せず、受給額だけを目的とした提案を行うケースも見受けられます。

この記事では、以下のような内容を、事例や制度の根拠も交えて詳しく解説します。

  • なぜ成功報酬型の助成金コンサルには注意が必要なのか
  • 社会保険労務士会が成功報酬を禁止している理由とは
  • 助成金制度の“本当の目的”とは何か
  • 信頼できる専門家を見極める5つのチェックポイント
  • 中小企業が助成金を依頼する際に注意すべきポイント

助成金は、「誰に頼むか」で結果が大きく変わります。本記事を通じて、自社にとって最適なパートナーを見極める目を養ってください。

成功報酬型コンサルとは?その仕組みと広がる背景

まず「成功報酬型」とは何かを明確にしておきましょう。成功報酬型とは、「助成金が受給できたら、受給額の○%を手数料として支払う」という契約形態のことです。

たとえば、ある企業が助成金を300万円受給した場合、30%の成功報酬契約であれば90万円がコンサル側の報酬になります。
一見すると「受給できなければ払わなくていい=リスクがない」ように見えますが、実はこの仕組みにはいくつもの問題点が存在しています。

問題点①:助成金に“成功”という概念はそもそも存在しない

最大の誤解は、助成金が“成果報酬型の支援”であるかのように見せかけている点です。

助成金(特に雇用関係助成金)は、要件を満たせば原則100%受給できる制度です。“採択”や“審査”で競争に勝つ必要はありません。この点が、採択制の補助金(例:ものづくり補助金など)とは根本的に異なります。

つまり、「受給できた=成功した」ではなく、「制度の条件に当てはまっていれば当然にもらえる」ものなのです。したがって、「成功したから報酬を払う」という構図自体が、制度の本質から外れているのです。

問題点②:“高額な手数料”が企業にとって割高になる

成功報酬型の助成金コンサルは、受給額に応じて報酬を設定するため、会社が得るメリットよりも、コンサル側の利益が先行することがあります。

たとえば、以下のような例です。

  • キャリアアップ助成金で3名を正社員化(1人あたり57万円×3名=171万円)
  • コンサル契約で成功報酬30% → 支払額は51万3,000円

これらの業務が、わずか数時間のやり取りと定型書類の作成だけだった場合、本当にその金額に見合う価値があるのでしょうか?

本来は社労士などの専門家と連携して、制度内容の説明を受けながら社内制度を見直す機会となるはずなのに、「申請して終わり」「社内には何も残らない」状況になってしまうことが少なくありません。

問題点③:社労士会が“成功報酬での助成金申請”を禁止している

実はこの「成功報酬型」の業務形態は、社会保険労務士法や社労士会の倫理規程に違反するおそれがあるとされています。全国社会保険労務士会連合会では、助成金の報酬について以下のようなガイドラインを出しています。

  • 助成金の受給を成果とした成果報酬型の契約は、助成金制度の趣旨に合わず好ましくない
  • 助成金の可否にかかわらず、業務内容に応じた報酬を適正に設定すべき
  • 成果報酬契約を前提とした営業活動は、社労士の品位を損ねる

つまり、社労士に正式に依頼する場合、「成功報酬です」という業者はルール違反の可能性が高いということになります。

問題点④:デメリットを説明しない“片面提案”が多い

助成金は、制度を導入すればお金がもらえるというものではありません。制度を導入することで生じる負担や運用リスクも存在します。

たとえば――

  • パート社員を正社員にすれば、その後の人件費や制度格差が問題になることも
  • 育休制度を導入しても、代替要員の確保や現場の不満が増す場合もある
  • 外部研修を義務化した結果、社員の反発を招くこともある

信頼できる専門家であれば、助成金制度を導入することで生じる“デメリット”や“制度運用上のリスク”を丁寧に説明したうえで、導入の可否を一緒に考えてくれます。

しかし、報酬が“受給額に連動”する成功報酬型では、「受給額を増やすために制度導入を急がせる」といった営業姿勢になりがちです。これは、企業にとって非常に危険なことです。

問題点⑤:“違法コンサル”による申請リスクと処分の可能性

助成金の申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。無資格者による申請書作成や提出代行は、社会保険労務士法違反(非弁行為)となり、行政処分や罰則の対象になる場合があります。

実際、以下のようなトラブルが全国で発生しています。

  • 無資格の助成金コンサルに依頼 → 書類が不備 → 不支給&返金命令
  • 虚偽の制度導入を勧められ、後日監査で返還命令+信用失墜
  • 成果報酬支払い後にトラブルが発覚し、弁護士沙汰に

助成金は国の制度であり、「不正」「誤解」「代行権限なし」で進めることは、将来的に大きなリスクを伴います。

信頼できる専門家を選ぶための5つのチェックポイント

それでは、助成金を申請するにあたり、本当に信頼できるパートナーとはどのような存在でしょうか?以下の5つのチェックポイントを参考にしてください。

1. 社会保険労務士(社労士)資格を持っているか

助成金申請は、社労士以外には許されていない業務です。「助成金アドバイザー」「コンサルタント」などの肩書きだけでなく、登録番号・事務所名が明記されているかを必ず確認しましょう。

2. 成功報酬ではなく、業務内容に応じた“適正報酬”を提示しているか

誠実な専門家であれば、制度の説明・申請書類作成・申請代行・アフターフォローなど、業務ごとに区分された報酬体系を提示してくれます。「受給額の○%」といった単純な報酬設計しかない業者は要注意です。

3. 制度の“デメリット”や“運用上の注意点”もきちんと説明してくれるか

信頼できる専門家は、「もらえる話」だけでなく、「もらうために何が必要か」「もらうことで生じる負担は何か」まで説明してくれます。片面だけの提案でなく、中立な立場でアドバイスしてくれることが重要です。

4. 社内制度や労務管理の改善まで視野に入れた提案ができるか

助成金は、制度導入の一環として活用されるべきものです。単に「申請だけ」「書類だけ」で終わる提案ではなく、就業規則の見直しや評価制度の構築までアドバイスできるかがプロとしての真価です。

5. 知識だけでなく“実績”と“継続的なサポート体制”があるか

助成金制度は毎年変わります。そのため、継続的なフォローや定期的な情報提供があるかどうかも見極めのポイントになります。「その場限りで連絡が取れなくなる」「質問に対応してくれない」といった業者は避けましょう。

まとめ|助成金を“正しく使えるパートナー”が中小企業の未来を変える

助成金は、国が企業の制度整備を応援するために用意している強力な支援制度です。
しかし、それを“誰に頼むか”によって、その成果は天と地ほども変わるといっても過言ではありません。

成功報酬型のコンサルタントがすべて悪いわけではありません。ただ、制度の本質を理解せず、「もらえる金額だけ」を強調する業者に依頼してしまうと、制度導入の目的がブレたり、企業にとって不利益な制度設計をされる可能性があります。

助成金は、お金の話ではなく、「人」と「組織」と「制度」を整える話です。だからこそ、信頼できる専門家とともに、以下のような姿勢で進めていきましょう。

  • 自社の課題や制度整備の目的を明確にする
  • 社員と共有しながら、制度を根づかせるための準備を行う
  • 助成金の最新情報を把握し、無理のない申請スケジュールを組む
  • 適正な報酬で、正しい知識とサポートを提供する専門家を選ぶ

最も重要なのは、助成金を“もらうこと”ではなく、助成金を通じて、会社の仕組みと職場環境をよくしていくことです。信頼できるパートナーを見つけて、助成金を“経営強化の武器”として活かしていきましょう。

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